たじま乳腺外科
担当医師
田島 厳吾
ビオチンは皮膚炎予防因子として発見されたのがその始まりで、古くから皮膚病の治療に効果があると言われてきました。
現在では主に、アトピー性皮膚炎の治療などにビオチンが用いられています。
アトピー性皮膚炎との関連では、現在様々な研究や報告がなされているところです。
例えば乳幼児のアトピー性皮膚炎ですが、乳幼児はビオチンの産生や吸収が低いので、ビオチンが不足しやすい状態にあります。
ビオチンが不足すると、たんぱく質の合成や免疫機能などが低下するため、皮膚形成がそこなわれて、その結果アトピー性皮膚炎が発症するのではと言われています。
現にアトピー性皮膚炎の乳児にビオチンを投与した所、症状が改善する場合があると言う報告もあります。
また、チリやダニをはじめとしたアレルギー物質が体内に侵入すると、ある特殊な細胞が刺激されて、ヒスタミンと呼ばれる化学物質が放出されます。
ヒスタミンには皮膚の炎症を引き起こす特徴があります。
ビオチンはこのヒスタミンの元ともいえるヒスチジンを体外へと排出して、アトピー性皮膚炎の原因となる物質を減らす働きがあります。
世界的にビオチンが重視されている傾向の中、日本ではまだ食品添加物として認められていない為、粉ミルクの中にもビオチンが含まれていません。
これが日本の乳児のアトピー性皮膚炎が多い理由なのではと言った見方あります。
ビオチンの必要量の一部は、腸内細菌で合成、吸収、利用されているので、通常の食生活をしていれば不足する事は無いと言われています。
しかし過度の偏食や腸内細菌の構成の変化、先天的に酵素の働きが弱い、ある種の抗生物質や睡眠薬を服用し続けているなどの要件がある場合には、ビオチン不足が生じることがあるので、注意が必要です。
ビオチンが不足すると、糖質のリサイクルや脂肪酸の合成、アミノ酸の代謝が滞るため、血液中に有機酸が蓄積されてきます。
また免疫機能やコラーゲンの生成が低下して、皮膚炎や結膜炎、脱毛や白髪か、筋肉痛、疲労感、うつ病といった症状がでてきます。
ビオチンは牛や豚の肝臓、いわしやさばの缶詰、茹でた大豆などに多く含まれています。
卵黄にもたくさん含まれていますが、卵白に含まれるアビジンとよばれるたんぱく質がビオチンと結合するとその吸収を妨げてしまうので、卵の取りすぎが返ってビオチン不足を引き起こす事もあります。
ただし加熱調理すればアビジンの影響はなくなります。
ビオチン療法とは、ビタミンB群の一種であるビオチンを積極的に投与する事によってアトピー性皮膚炎の症状や、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)や尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)、また花粉症症状の改善を図ろうとする治療法を指します。